サポライター #16 フェロー諸島
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サッカーというスポーツは世界一
グローバルなスポーツと言って過言ではありません。FIFA加盟国は今や211の国と地域に渡ります。
その中で私が日本代表と同じくらい応援している島がフェロー諸島。ヨーロッパのはずれにある本当に小さい島で、W杯などの国際大会には全く縁が無いのですが、予選ではドイツやポルトガルといった列強にも立ち向かい、たまにサプライズを起こします。
人口5万人、羊は10万頭。こんなサッカー関係無い情報でも衝撃的で、魅力的なのですが、列強に立ち向かっていくその姿、そして島民がサッカーを楽しむ姿はさらに魅力に満ちています。そんな一端を紹介できたらと思い、今回このスペースをいただきました。
フェロー諸島代表の2大サプライズ
◯1991年、初の公式戦でW杯ベスト16を撃破
→この島は最初から驚かせました。FIFA加盟後初めての公式戦で直前のW杯でベスト16入りしたオーストリアを1-0で下す大金星を挙げました。
島のグラウンドが使えず中立国スウェーデン開催、ニット帽が印象的なGKが完封し、チェスプレイヤーが決勝点を挙げるなどアマチュア軍団の話題は枚挙に暇がありませんでした。
◯元欧州王者ギリシャに2連勝
→2016欧州選手権予選で2004欧州選手権チャンピオンのギリシャに2連勝し再び世界を驚かせました。第1シードだったギリシャは最下位に沈み、フェロー諸島は4位とプレーオフ進出まであと一歩のところまでいきました。
そして、フェロー諸島に敗れたことによりギリシャ代表監督を解任されたクラウディオ・ラニエリ氏が直後に就任したイングランドのレスターを奇跡の優勝に導いた「実質フェロー諸島」は一部サッカーファンの間では有名な話です。そう、岡崎選手の快挙の裏にもフェロー諸島がいたのです。
小さい島でも競技レベルは向上中
フェロー諸島代表の選手は多くが島のリーグでプレーしています。島の選手は皆アマチュア。代表主力選手には現役大工もいます。
それでも2010年代からプロ選手も増えてきて、代表チームは戦力が上がってきています。GKはイングランドプレミアでのプレー経験もありますし、ストライカーは今夏ドイツ2部に移籍しいきなりリーグ2戦連発。フェロー諸島はデンマーク領なので、デンマークリーグでプレーする選手も多いです。
近年、人口32万人で世界を驚かせたご近所アイスランドと同じような成長戦略を取り、設備投資と指導者の確保により少ない人口からも優秀な、戦える人材が育っているそうです。
…という話はたまたま泊まった民宿のオーナーがサッカークラブのコーチをやっていたので聞けました。石を投げればサッカー関係者に当たる、というくらいサッカーと関わる人間がこの島には多いです。
代表戦の翌日、ナショナルスタジアムに連れて行かれましたが、12歳の子供たちが激闘から間もないピッチで練習している光景は羨ましい限りでした。
トップレベルを知る監督が長期政権を築いているのも大きいです。1992年欧州選手権で「ダニッシュ・ダイナマイト」デンマーク代表のキャプテンとして優勝したオルセン氏が2010年から監督に就任。地道に結果を出し続け、島民からの信頼も厚いので、先日2020年までの契約延長にもサインしてくれました。…なんか耳が痛くなるような話ですね。
直向きに戦う姿が熱い
そんなフェロー諸島代表の試合を私はこれまで2試合観に行きました。たった2試合です。その程度でサポーター名乗ってすみません。でも仕方ないです。どんなに頑張っても1試合行くのに10万円以上は飛びますので。
そのうちの1つ、ハンガリーでのアウェイ戦は非常にアツいものでした。
4万人の観衆が集まる完全アウェイの中で、フェロー諸島はハンガリー相手に先制してしまいます。(決めたのが主力プロ選手の出場停止で代わりに出てきたアマ選手だったのが更にアツい…)
4万人いるのに、ピッチで、しかも逆側のゴールで喜ぶ選手たちの声が聞こえました。
多くの観客は、信じられない、こんな奴らに、といった顔をしています。
こんな異様な空間、普通の試合ではそうそう体験できません。上手く表せる言葉も私の語彙力では見つかりません。
終わってみたら2点取られて2-1で敗戦。それでもどこか清々しいものがありました。帰路につくハンガリーのサポーターはホッとした様子。これだけでもしてやったり感はありました。
ヨーロッパは強い相手が多いですし、正直言って負ける試合の方が多いです。それでも一矢報いたり、急にレベルの高いダイレクトパス回し始めたり、島の誇りにかけて勇猛果敢に立ち向かっていく選手を見ていると清々しい気持ちになります。
日本と全く異なる環境のサッカーを感じてほしい
フェロー諸島のサッカーを観る、応援することの魅力は、どんなサッカーファンでも「非日常」を感じられることです。
普通の人ならサッカーを観る、スタジアムに行くこと自体が「非日常」だと思うのですが、サッカーを見慣れてしまった我々は最早サッカーがあることが「日常化」してしまいます。
フェロー諸島のサッカーには「非日常」要素がたくさん含まれています。リーグ戦はすごい景色のスタジアムで開催するし、代表戦には大工が出場しています。サッカーを取り巻く全てが日本と全く違います。そしてそれを「日常」としてこなしている彼らの姿に惹かれて、度々訪れてしまいます。
「非日常」というのは旅行と同じでワクワクするものです。スポーツも突き詰めれば娯楽なので、そういった気持ちも大事なんじゃないかと思います。世界にはこんなサッカーとの接し方もあるんだって、息抜きとして見てもらえたら、少しサッカー観も変わるかもしれません。
YouTubeで検索をかければ、フェロー諸島リーグのハイライト映像が見つかりますし、最近はDAZNでヨーロッパ予選を放送してくれることもあるみたいです。お時間あれば是非フェロー諸島サッカーの世界へおいでよ。
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原の感想
勉強になりますねぇ。
フェロー諸島のサッカーについてはなかなか知らないですもんね。大工さんすごいw
たしかに、サッカーと言っても色んなサッカーがあって国によって立ち位置なんかも違うんでしょうね。
その欧州予選を見にいっちゃうっていうのはなかなかスゴイですね。言葉に出来ない感覚を得たのでしょうね。
僕もロシアに行って完全に価値観変わりました。サッカーって色々あります。
もっと色んなサッカーを感じてみたい気がします。
1つきになるのはこのサポライターさんがなぜフェロー諸島に興味を持ったのか?と言うことですね。何がきっかけだったんだろ。なんでフェロー諸島に行くことになったんだろ。フェロー諸島、興味出てきた。