text by きょん @rrrm452
YS横浜というサッカークラブをご存知にない人のために、一応説明しておくが、J3に所属するクラブの一つで、正式名称は「Y.S.C.C.横浜」という。そして、運営団体がNPO法人である唯一のクラブでもある。ちなみに、YSCCとは「横浜スポーツ&カルチャークラブ」の略なので、YS横浜と略すと「横浜スポーツ横浜」となる。
それはさておき、実はYS横浜というクラブは、Jリーグクラブの中で断トツで売上規模が小さい。54クラブ中の、54位。その額は1億9300万円。ヴィッセル神戸のイニエスタ選手が年俸約32億円という報道があるが、それと比べるとどれだけ小さな売り上げ規模かお分かりいただけるかもしれない。
そんなクラブが2018年のJ3リーグに革命を起こしている。
YS横浜は8月1日時点でのJ3の順位は17クラブ中の9位という位置。断トツで売り上げ規模が小さいクラブなのにも関わらず、8チームを抑えているのだ。(引き分け数がリーグで2番目に多いので、あと一本が出ればという試合がいくつもある)
どうしてこれだけ躍進を起こしているのかの理由を考えた時に、考えられる要素として「強固なセンターライン」という項目があげられる。
そのセンターラインを今日は紹介して、YS横浜という存在をこれを読んでいる人々に知ってほしいと思う。
まずは、ゴールキーパー。サッカーは「失点しなければ負けることはない」スポーツである。そのため、失点をしないゴールキーパーは非常に重要な役割なのだ。このYS横浜には、J3でも指折りのゴールキーパーが所属している。その名も、浅沼優瑠(あさぬま すぐる)。
彼のビックセーブによって、どれだけのピンチを救ってきたかという逸材。もはや、彼がいるからYS横浜式可変フォーメーションをできるといっても過言ではない。ちなみに、YS横浜式可変フォーメーションとは、攻撃の押し込んだ時、現代サッカー用語でいう「ポジショナルな攻撃の際に、サイドバックがとにかく高い位置をとる事で攻撃に厚みを加えていく」というもの。そんなYS横浜スタイルは、カウンターを喰らえば非常に困る。カテゴリが3部ということもあって、相手のカウンターも鋭さを欠く場合があるが、裏に膨大なスペースを空けてしまうリスクがある。そのリスクの穴埋めをするにが、この浅沼なのだ。
シーズン序盤から安定したパフォーマンスを続けていて、ミスをすることもほとんどないという選手。飛び出してコースを消すというよりも、どっしりと構えてボールを待つタイプのゴールキーパーで、枠内に飛んできたシュートは大体止める。グラウンダーのシュートにはやや弱い印象もあるが、ハイボール処理もミスなく行えるというゴールキーパー。これがYS横浜をこの順位に押し上げて一人であることは間違いない。
次に紹介したいのが、チームの心臓である後藤京介(ごとう きょうすけ)。モンテネグロのチームに所属するという異例のキャリアを持つ選手なのだが、彼の大きなストロングポイントは「キック」である。その多彩なキックでYS横浜の攻撃を操っている。
今年のYS横浜の試合を観戦しているとよく実況が口にする言葉として「刺すパス」を出せると出てくるのだが、この刺すパス、つまりは楔にパス、縦パスを誰よりも意識強く、そして高精度に出せるのが後藤京介なのだ。この後藤京介の何が凄いかというと、セントラルハーフ(通称:ボランチ)としての最低限の動きはしっかりとこなした上で、このキックという部分を活かしているのだ。
しっかりと運動量を活かして、攻撃・守備に関わりに行くことはもちろん、サイドバックがボールを持った時のサポート、センターバックがボールを持っている時の引き出しなど、その動きはまさにチームの心臓。しまいには、第16節の鹿児島戦では右サイドから弾丸ミドルを決めるなど、もはやなんで、J2のクラブが欲しがらないのか分からないレベルの選手。
ここまで、GKとチームの心臓を紹介してきましたが、次に紹介するのは「チームの潤滑油」のような存在(就活か)。
その名も奥田晃也(おくだ こうや)。アルビレックス新潟のユース出身の選手で、今シーズンは4得点を決めている背番号「15」。この奥田晃也の打開力は人一倍優れており、カウンターからでもポゼッションからでも得点につなげてしまうという選手。自慢は豪快なドリブルで、とにかく前に前に進んでいける選手。ビルドアップの経由点が後藤だとすると、ポジショナルな攻撃の経由点は奥田と言っても過言ではない。
得点数にはそこまで反映されていないものの、この奥田の存在はYS横浜が9位という順位にいる象徴であるはずだ。今シーズン、コンスタントに出場を続けてきたこの奥田だったが、どういう理由かは定かではにが第17節の沼津戦を欠場した試合があった。その試合のYS横浜は、チームの心臓である後藤のパスを受ける選手もおらず、前線でタメを作れる選手を欠いたことから無得点で沼津に敗れてしまった。この試合を観てから、奥田という選手のチームにおける潤滑油という印象付いたのだが、彼がいることで攻撃の厚みは1.5倍変わる。ぜひ、見て欲しい選手。
そして、最後に紹介したいのが「横浜の暴走機関車」こと、北脇健慈(きたわき けんじ)である。彼の面白いところは、「信じられないくらいは知る」という所。試合を観ていても、そこまでプレッシングに行くのか!そこまで一人で持ち上がるのか!という場面は何度見たことか。試合終盤になっても衰えることないその走力は、YS横浜を前線から元気付ける。身長こそ大きくはないが、その溢れ出るガッツで今季は全試合でシュートを放っている。
元のポジションはサイドの選手なのだが、今シーズンは去年のチーム内得点王の辻の長期離脱というチーム事情によって、この北脇がシーズン開幕からワントップを担当している。シーズン序盤はサイドに流れてボールを受けるシーンが目立っていたが、最近では中央でのプレーも熟してきた。力強いシュートも彼の魅力の一つで、チームが後ろ向きになっている時にでも一人でひたすら走り続けている男、それが北脇。この「北脇ランニング」にも注目してもらいたい。
さて、ここまでYS横浜を支えるセンターラインを紹介してきた。J3でも屈指の巨匠の浅沼、チームの心臓・刺すパスの後藤、チームの潤滑油・打開の奥田、そして横浜の暴走機関車「キタワキ11号」のプレーに目を向けて欲しいと思う。
現在J3リーグは中断期間中ではあるが、次のYS横浜の試合は8月26日(日曜日)にガンバ大阪U-23との対戦がある。
Jリーグの地元のクラブを応援するのはもちろん、サブサポートチームを作ることでサッカー観戦はさらに面白さを増す。これを機会に、Jリーグで一番低い売り上げ規模のクラブ、Y.S.C.C.横浜というチームに注目してみないか?
[文:きょん きょん : 駆け出し分析家 (@rrrm452) | Twitter
J2のアビスパ福岡を中心に、J3のYS横浜も応援しています。サッカー分析に力を入れていて、ただいま勉強中。]
原の感想
文うま!!
一発目からこのクオリティは逆に迷惑なレベルですw
みなさん、このクオリティは求めてないので下手でもなんでもお寄せください!笑
僕はYSCCが好きです。
J3参入からなかなか勝てない時期にスタジアムDJをやらせてもらいました。予算規模も小さく、当時からJ3参入に反対の声もあったと聞きます。
その中でもしっかりと力をつけ、樋口監督の理想のサッカーを体現して戦っています。その戦いを見事に表現している文章だと思います。見に行きたくなったでしょ?笑
今度からYSCC横浜ってどんなチームなの?と聞かれたら「強固なセンターラインが揃ってて」と言います。笑
マジでありがとうございます!やっぱりサポさん最強だ。
きょんさんの、次作にも期待!!